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BAY’S INTERVIEW

2013 Autumn

BAY’S INTERVIEW

第2回 2度の脳梗塞を乗り越えたスーパーアイドル

1970年代にデビューを飾り、日本を代表するトップアイドルとして常に第一線を走り続けてきた西城秀樹さん。「ヤングマン」の爆発的ヒット、アジア進出のパイオニア…と華やかな芸能人生を歩んで来られました。
そんな西城さんが脳梗塞を発症したというニュースを覚えておられるでしょうか。一時は引退も考えたという壮絶な闘病生活について、医療の現場で感じたことについて、お話をお聞きしました。

一度目よりも二度目の方がショックが大きかったかもしれません。

ご存知の方も多いと思いますが、僕はこれまでに二度、脳梗塞を発症しています。最初は2003年、ディナーショーのために訪れていた韓国の済州島でした。異国の地で体の異変を感じた僕が、友人の医師に電話で相談したところ「脳梗塞の疑いがある」と。とりあえずの応急処置として友人のアドバイス通り、アスピリンを含む鎮痛剤を飲みながら舞台をこなし、帰国してすぐ検査を受けたらラクナ脳梗塞と診断されました。何も知識が無かったために「脳梗塞?何だそれ?」というのが正直な感想。しかし入院して数日のうちに症状はどんどん悪化し、話そうとしても呂律が回らず、言葉が出ない。この時、初めて事の重大さを悟ったんです。

長いリハビリを何とか乗り越え、やっと歌手として復帰できたと思った2011年、脳梗塞が再発。これはショックでしたね。だって食事に気をつけ、水分補給もしっかりしていたのに、って。結果的には二度目の方が後遺症が重く、リハビリも厳しいものとなりました。こうして再び復帰して、自分の体験をお話できるなんて信じられないくらいです。

主治医の先生に突っかかってよく困らせてしまったものです。

実は一度目の入院の時は、主治医の先生とよくケンカをしました。といっても、一方的に僕が突っかかっただけですが。例えば、後遺症で歌声が中々出ないことを訴えると「高音が出ないならキーを下げて歌ってみては?」と言われた時。「そういうことじゃないでしょう!」と思わず怒鳴ってしまったんです。先生は僕を励ましてくれたのに…今思い出すと申し訳なく思います。

しかし、この出来事に“医師と患者の常識の違い”が浮き彫りになっていると思いませんか?先生にとっては「日常生活に不自由がないから回復」でも、プロの歌手である僕にとっては「ちゃんと歌えるようになって回復」なんです。そんな自分の気持ちをわかってもらえないことにイライラしてたんですね、当時は。その先生とは今、とても親しくしているので安心してください(笑)。

患者と医師の親密なコミュニケーションは病気と闘う勇気をくれるんです。

やはりドクターは「数値が回復すること」「日常生活に不自由がないこと」を判断基準として患者を見ますよね。もちろん当然なのですが、あえて一人ひとりの声や気持ちに耳を傾けてくれる姿勢があれば、信頼関係はぐっと深まると思います。忙しいドクターが、いちいち親身に話を聞いていたら大変だということはわかります。だけど患者にとっては、「どういう風に感じますか?」「何か質問はありませんか?」の一言が安心につながり、病気に立ち向かう勇気になるんです。

そういう意味で素晴らしかったのが、僕が入院していたリハビリテーション病院。ドクター、看護師さん、療法士さんなど多くのスタッフが関わってくれるのですが、誰か1人に症状のことを相談したら翌日には全員が情報共有している。チーム医療って言うんですか?コミュニケーションの大切さを、ここで実感しました。

リハビリ中の患者は孤独です。それは自分が経験しないと決してわからない。

とはいえ、最初はリハビリにも前向きになれませんでした。「ボールを持ち上げる?おはじきをする?そんな子供みたいなこと、なぜ大の男がやらなくちゃいけないんだ!」って思うんですけど、やってみたら本当にできない(笑)。それを素直に受け入れるまでには相当な時間がかかりました。

リハビリというのは、今日やって明日できるものじゃない。1年単位なんですよ。1年後に気がつけば、ボールを取れるようになっていたり、歩き方が少しスムーズになっていたり…亀の歩みですよね。渦中にいる本人は、とてもとても孤独です。これほど孤独な闘いであることを、僕自身も経験して始めて知りました。そういう患者には、少しの進歩を見逃すことなく「良くなったね」「頑張っていますね」とまめに声をかけてあげてください。

リハビリはまだまだ続いています。やる気、元気、ヒデキです(笑)。

そういう僕のリハビリも、まだまだ続きます。食生活も厳格に管理していて、朝はリンゴとコーヒーとヨーグルトだけ。昼はめん類をちょっと。夜は一汁一菜。1日1500kcal以内です。1回目の時もそれなりに気をつけたつもりだったんですが甘かったんですね。「たまには焼肉食べてもいいや」とか。2回目を発症してから、徹底して管理するようになりました。

辛いリハビリを二度も乗り越えた僕のモチベーションは、やっぱり家族。いつも笑顔で支えてくれる妻と子供達のために、少しずつでも進歩できればと思っています。また「秀樹さんの頑張りを見て、勇気や元気をもらいました」という方々の言葉も、逆に僕を励ましてくれます。病気を治す時、一番大切なのはメンタルですよね。医療や薬の力は必要だけど、頼ってしまったらダメじゃないかな。医学の力を活かすような前向きな努力があってこそ。やる気、元気、ヒデキってね(笑)。
PROFILE    西城 秀樹(さいじょう ひでき)
1955年生まれ、広島県出身。幼少期から音楽に親しみ、15歳で歌手を目指して上京。16歳でデビューし、瞬く間に国民的アイドルに。野口五郎、郷ひろみと共に“新御三家”と呼ばれ、数々の音楽賞を受賞。日本初のスタジアムコンサートや、日本人初のアジア進出などでも話題に。
BOOK

『ありのままに 〜三度目の人生を生きる〜』
廣済堂出版
二度目の脳梗塞との闘い、リハビリ生活、それを支えた家族への思い…病気である自分の葛藤や悩みを、文字通りありのままに綴った一冊。「カッコ良く生きるよりも、素顔の自分でありたい」という人生への姿勢が、逆に素敵だと感じます。