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FRONT LINE

2013 Spring

FRONT LINE

第1回 糖尿病のマネジメント「血糖管理にも“質”が大切なんです」

1日24時間で血糖値は大きく変動します。
HbA1cと血糖自己測定で“変化”が捉えられます。

人口の高齢化、飽食や食事の欧米化、運動不足を背景に、2型糖尿病の患者数は増え続けています。近年、血糖コントロールの指標であるHbA1cにも“質”が重視されるようになり、簡便な血糖自己測定でその質を向上させられることから、注目を浴びています。

合併症予防には平均血糖値でなく血糖変動の大きさに注目する

糖尿病は、疾患そのものだけでなく、合併症を引きおこすことが大きな問題になります。そのため、その治療目的は、より良い血糖コントロールを維持し、合併症の発症と進行を抑制し、健常者と変わらない日常生活と寿命を確保することにあります。血糖値の日内変動は、健常者では食事に伴う変動も含めて非常に緩徐ですが、糖尿病患者さんでは多くの場合、大きく変動します。血糖値の指標として、健康診断や日常診療ではHbA1cが用いられていますが、HbA1cが提示しているのは血糖の平均値にすぎません。空腹時の血糖値が高くないにもかかわらずHbA1cが高い場合、まずは食後に高血糖がおきていることを疑います。

Doctor’s
Point ❶
食後高血糖は心血管イベント発症と深い関連がある

「食後の高血糖」と「夜間の低血糖」の予防が死亡率低下に重要

糖尿病の患者さんでは食後に血糖値が急上昇しますが、食後1〜2時間後に血糖値自己測定を行うと、その傾向が一目瞭然です。食後高血糖は、それ自体が動脈硬化進展を加速する独立した危険因子であることが指摘されています。生活習慣を改善しても是正できない場合は、糖の吸収を抑える薬などによる治療が必要となります。
一方、特に強力な治療を受けているような場合には、患者さんは就寝中に自覚のないまま低血糖状態に陥っていることがあります。最近の研究では重篤な低血糖も死亡率増加のリスクとなることが示唆されていますので、低血糖を如何に回避するかということも治療上の重要なポイントです。
血糖自己測定を有効に活用することで食後高血糖や低血糖の有無を把握することが可能となり、より適切な薬の選択や服薬指導につながります。

Doctor’s
Point ❷
患者さん自身が血糖自己測定により血糖の日内変動を知ると、生活習慣や食生活を見直す大きなきっかけとなる

血糖値とHbA1c 値測定を組み合わせて長期に良好なコントロール達成を

血糖自己測定を活用して測定した空腹時および食後の血糖値と、HbA1c測定を組み合わせることで、より効果的な糖尿病治療が実現できます。空腹時血糖値に比べHbA1c値が高い場合は、食後血糖を測ってみましょう。自己血糖測定の測定ポイントを増やせば、より日内変動が捉えやすくなります。食前と食後1~2時間での測定が血糖の変動幅を確認するには最適でしょう。
必要に応じて、現在の食事運動・薬物療法を見直します。その上で1~2カ月後のHbA1c値が改善しているかを確認します。一方で、HbA1c値が良好にもかかわらず血糖値の変動が大きい場合は、高血糖だけでなく、低血糖があることを疑います。HbA1c値に変化がなくても、血糖変動の幅を考慮した診療を実践いただくことが、長期にわたる良好なコントロール達成につながります。

食べる糖質の質と順番を重視。運動はウォーキングを無理なく継続

高血糖予防には、食事と運動の指導も必要です。食生活は、糖質過多に陥らないことが肝心で、同じ糖質源でもせんべいや白米などの「白い糖質」は血糖が吸収されやすく、全粒粉や玄米・雑穀などの「茶色の糖質」は食物繊維が豊富で緩やかに吸収されます。食べる順番も大切で、野菜や海藻を先に食べる「ベジタブルファースト」が理想です。運動は、80代になっても無理なく続けられるウォーキングや「エレベーターを使わない」など日常の取り組みも効果的です。

Doctor’s
Point ❸
1回で虚偽とわかる測定値を見ても、一方的に否定せずに来院したことを褒めるなど“アメとムチ”を使い分けて患者さんのやる気を引き出す

Column

負担軽減には“1日1回食前後の測定”を1週間組み合わせる

血糖自己測定は食前と食後のペアで測定することが基本ですが、1日に数回も測るのは苦痛だという人には、月曜は朝食の前後、火曜は昼食の前後、水曜は夕食の前後という測り方もあります。さらに、月曜は朝食前、火曜は朝食後、水曜は昼食前、木曜は昼食後……と、1週間かけて測定する方法もあります。別の方法として、宴会などで高カロリーを摂取した日、特に運動した日など、ポイントとなるスポットを測るだけでも自分の血糖値の変動を把握でき、見違えるほどの改善につながった患者さんもいます。

PROFILE    西村 理明(にしむら りめい)
1991年東京慈恵会医科大学卒/1997年東京慈恵会医科大学臨床系大学院(内科)修了。富士市立中央病院内科医長を経て2002年より東京慈恵会医科大学勤務、2011年より糖尿病・代謝・内分泌内科准教授/医学博士/公衆衛生学修士/Graduate School of Public Health, University of Pittsburgh修了(Master of Public Health取得)